英語のhonest(誠実)から文字をとったhnst(オネスト)はベルギー発のデニムブランド。着心地やデザイン性はもちろん、環境に配慮された製造方法で作られている。ハイウェストでスタイルをよく見せるデニムやボーイッシュでバギーなサイズ感のアイテム、色鮮やかなブルーからダークなブラックまで、着る人を選ばないようなダイバーシティなアイテムからは、つくり手の誠実さがうかがえる。
着る人への誠実さ、ものづくりの責任の一貫性
リサイクルデニムを原材料とする hnstは、その製造過程において「収穫」「粉砕」「織物」「デザイン」「縫合」「洗濯」「循環」の7つのステップを構えており、それら1つ1つが重要な役目を担っている。ただ製造を繰り返すだけでなく、消費者に渡ったあとの責任、そこからの循環性の先を見据えているのだ。
はじめに素材選びの段階で、オーガニックなもの、もしくはリサイクルされた素材のみを使用している。リサイクル素材として消費者「ポストコンシューマー」から回収されたものは品質ごとに分類され、科学的ダメージの強い素材は工業用材料に使用するためのサイクルへ送られる。次にボタンやリベット、ラベルなどを取り除き、細かな繊維へと細断されたら、オーガニックコットンなどと共に混紡され、織られていくという仕組みだ。
この時点で染色が施されるが、ブランドの代表とも言えるブルーデニムにはSmartIndigoを使用しており、節水・有害な副産物を抑えた方法で染色を行っている。こうして新しく生まれ変わった生地は、消費者が長く使用できるようなデザイン性の高いアイテムにデザインされる。
従来であれば、デニムには水質汚染の原因となるPVAプラスチックがコーティングされているのが通常だが、hnstのデニムはリサイクル可能にするため食物繊維の一種であるペクチンをコーティング料として使用している。それによって個人のもとで永遠に使えるような流行に左右されないデザイン性と、万が一リサイクルをする際に環境に配慮された機能を兼ね備えている。hnstの縫製チームは、厳格な労働基準によって守られていることも重要なポイントだ。安全な職場環境を守るため、サプライヤーはヨーロッパ圏のみと提携しているため見えないところで低賃金で危険な環境で労働を強いられることはない。洗濯においても節水に成功し、有害な物質を抑えた方法を採用。電力の1/3は太陽光エネルギーを使用している。
こうして、愛情と誠実さが込められたデニムは消費者の元に届けられるが、それで終わりではない長く愛用されることを理想としており、リペアすることで形が変わるまで添い遂げられるよう、修理サービスも提供している。持ち主の気が変わったら、製品回収に回せば次回の購入時に使用できる割引が与えられる。製造から製品の回収まで一環したこのプロセスは、多くのブランドが、製造工程を見直すべき機会にもなるある1つのムーブメントにもなっているだろう。
隠すものなんてなにもない
hnstは透明性の最も高いブランドの1つと言えるだろう。先ほどの厳密な製造過程だけでなく、製造過程を経た結果を自身のホームページ上に記している。従来のデニム産業であれば、1つのデニムを作るのに約1478ℓの水が使われる。一般的な浴槽の水量が200ℓと言われているので、1つのデニムに使用される水の量がいかに多いかは明らかだ。二酸化炭素の排出量は7.86kgで、これはディーゼル車が33km走行する際に排出される二酸化炭素の量と同じである。一方でhnstの1本のデニムに使われる水の量は約138ℓで、従来のデニムに使われる水の量の約91%カットに成功している。二酸化炭素排出量は4.16kgで、こちらも従来の排出量より遥かに削減している。
リサイクル材料を使用し、太陽エネルギーなどの再生可能エネルギーになるべく頼るように努めている。また、全ての製品は素材と成分が細かに食品表示のように透明化されている。リサイクルコットンとオーガニックコットンの比率から使用されている糸の素材、糸やボタンの製造国など、一般的な洋服のブランドの表示ラベルからは得られない情報が透明化されている「隠すものなんてなにもない」からこそ、堂々と自社の製品を世に届けることができるのだ。
強い情熱と視点でファッション界に立ち向かう
そんなhnstを牽引するのは、アン・シャペル(Anne Chapelle)。元はアン ドゥムルメステール(ANN DEMEULEMEESTER)でCEOを務めていた。そこで培った経験と、新たなビジョンでファッション界に新たな風を吹かす。彼女は以前インタビューでこう語った。「ファッションは時間もお金もかかるもの。強いビジョンを持ち、固執しなければならない。本当に好きじゃないと、続けられない。」環境に対する強い意志とファッションを愛する気持ちが重なり、誰もが購入するだけで地球に貢献ができるデニムが出来上がった。
1本のデニムを作るのにどれほどの水が汚染され、どれほどの二酸化炭素が排出されているか、ファッションに精通していてもなかなか知らないだろう。常にそこには課題があり、向き合う必要がある。hnstだけでは解決しきれない問題は、わたしたちに直通する問題でもある。しかし、もし、あなたが新たにデニムを購入する機会があればhnstのようなブランドを選ぶことで、解決に少しずつ近づいていくだろう。
writer
Atsushi Nakayama
1995年生まれ。高知県出身。アメリカ留学後、オーストラリアでワーキングホリデーを経験。2024年Tender Party参加。サステナブルとファッション関連担当。時々モデル。時々キャットシッター。
BRAND NAME
hnst
オネスト
COMPANY NAME
NOUN
ノウン
INFORMATION
Q_1
環境負荷の低い生産背景を実現するために、貴社が最も積極的に取り組んでいることを教えてください。
原材料は全て使用済みのアイテムを収集し、解体し生地を作っている。
品質表示のポリエステルラベルを使用しない代わりに内ポケットに印字。
動物由来のレザーでないセルロースベースのネームパッチを使用。
洗浄過程で使用する水を大幅に削減し、ヨーロッパ内で生産することで輸送コストなどデニムデニム製造過程で起こる環境への負荷を削減し持続可能なデニムを展開しています。
2024/11/01