オンライン販売が定着した昨今において、インターネットやSNSを介したビジネスへのアプローチはもはや多数派。Esmeralda Serviced Department(以下エスメラルダ)もまた、2017年からオンラインで衣服の販売を開始したユーズド&セレクトショップだ。しかし、その動機や着眼点は他とやや毛色が異なっている。エスメラルダが発信するのは、リアルな関係性に基づいたファッションへのフラットな視点。「オンラインショップのきっかけは、共同オーナーであり友人のフォトグラファーが撮った作品を発表できる場を作りたかったから。洋服を売るために始めたことではなく、展示をオンライン上で行い、作品として撮影した衣服を販売することで収益化を図るのが、駆け出しである自分達の力だけでもできる手段だった」。
当時はウェブマガジンやプリントメディアも検討したが、どれも形骸化された表現のように思えて面白みが足りない。元々古着好きだったというエスメラルダのディレクター金山さんは、限られた資金ながら友人・知人のつても辿りつつ手探りで買い付けを行い、ショップ運営に注力した。
「2019年あたりからポップアップショップをやらせてもらうようになり、評判も売り上げも良かった。対面での接客で服を販売できた経験は大きく、その後は自分たちでスペースを借りて何度かポップアップを行いながら店舗出店のイメージを固めていった」。
そうして2022年、エスメラルダの実店舗がオープン。古着のみから始まったオンラインショップは、そのときすでに国内外を問わずいくつものブランドと交流するようになっていた。
「現在セレクトしているブランド数は10ブランドほど。商品構成は古着よりセレクトの割合が少し高くて6:4くらいのバランスになっている。ただ、私たちが大切にしているのは上質でシンプルなもの作りであって、古着か新品か、メンズかウィメンズかはそれほど重要視していない。どちらも、役割が違うだけで身近にある良いものに変わりないので」。
金山さんに言わせれば、古着は今のファッションに当時のカルチャー感やストーリー性を馴染ませるための提案で、セレクトブランドは古着には出せない“新しい人間像”のための提案。エスメラルダの独特な世界観は、一つの物事にとらわれないニュートラルな発想によって支えられている。
「今の時代において、ほとんどのブランドがサステナビリティを意識せざるを得ない状況。目に見えにくい背景などもたしかにあるが、その中で何を信頼するかを自分たちなりの視点で解釈している」。
グローバルにつながる価値観を新旧交えて創造
フランスとデンマークを拠点にするアンダーウェアブランド「Baserange(ベースレンジ)」を代表に、オランダのバックブランド「Pien(ピーン)」や、デッドストック生地などを使ったスペインのメンズシャツ専門ブランド「CAMISAS MANOLO(カミサス マノロ)」、友人デザイナーが立ち上げた日本のブランド「well(ウェル)」、など、エスメラルダが取り扱うブランドは国もジャンルも多種多様。さらに、上質でシンプルなもの作りの思想は洋服のみならず、セラミック製品やタオルなど生活雑貨類にも行き渡る。
「理想は代理店を介さずに行う直取引。そのほうがデザイナーとのコミニュケーションが取りやすいし、生産工程の様子などもわかりやすく、結果的に信用につながる。小規模展開ゆえにオーダーしてから1年以上待つようなブランドも中にはあるが、自分たちを含めて、身の丈にあったペースと量を持続させる精神に共感している人はたくさんいるように感じている」。
店舗を拠点にした写真展やポップアップイベントの実施は増え、気の合う者同士が気軽に出会えるコミニティースペースとして機能しているエスメラルダ。また、国外からの来客も多く、特に韓国の間では注目スポットになっているのだそう。ショップの成長、そして金山さん自身の成長に伴い、ファッションとの向き合い方にも変化が表れてきたが、根本は変わらない。これからも一方的な正解を押し付けず、見る側に善を委ねる余白の部分に価値を託したい。
writer
本田圭佑
1984年生まれ。古着&インポートを扱うアパレルストアに勤務後、出版社を経てフリーの編集者に。多様なスタイル、カルチャーを文脈にさまざまなメディアで記事執筆やインタビュー活動、企画構成を行う。
BRAND NAME
ESMERALDA SERVICED DEPARTMENT
エスメラルダ サービスド デパートメント
COMPANY NAME
ESMERALDA SERVICED DEPARTMENT
エスメラルダ サービスド デパートメント
INFORMATION
2024/11/13