Fashion

2024.11.12

#1_創造の思想と美意識を憂い、過去と現在を繋ぐ経緯を慈しむ。東京のシーンを作り上げたLAILA VINTAGEの誇り

photographer SHOTA KONO
stylist SAEKO SUGAI
hair KAZUHIRO NAKA
make-up SUZUKI
model NONO KINOUCHI, AYANO OTAKI, IPPEI TANAKA, MIYU MOTEGI, RISA MAKINO, YUKI NAKAMURA
text KEISUKE HONDA

#1_創造の思想と美意識を憂い、過去と現在を繋ぐ経緯を慈しむ。東京のシーンを作り上げたLAILA VINTAGEの誇り

良質なメゾンヴィンテージやデザイナーズのアーカイブアイテムを展開するショップは数多くあれど、日本国内においてその立役者は間違いなく「LAILA VINTAGE」だ。LAILA VINTAGEは2002年の発足以降、「未来に遺すべきか否か」の姿勢のもとに一貫したバイイングを行ってきた。とはいえ、時代が移り変わるなかで店内構成を含めた編集は必然的に変化し、常にアップデートがなされている。流行や来店者のニーズに合わせるのではなく、「自分たちが今提案したいもの、提案し続けたいもの」を追求し、そして、記号的かつ資産的価値によって形骸化されることのない「リアルクローズとしてのヴィンテージ」を提案する。これこそが国内外の愛好家から絶大な信頼を得るLAILA VINTAGEのセンスそのものと言える。

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from left: NONO wearing vintage top, skirt, pants by HOOKED | AYANO wearing vintage MODELE DEPOSE shawl, dress and top by ESMERALDA SERVICED DEPARTMENT | YUKI wearing vintage PIERRE CARDIN cape by LAILA VINTAGE

リアルクローズとは。過去への敬意といまの視点で紡ぐミライ

「ヴィンテージの魅力は、クリエイションの背景にある思想や美への意識。そして、過去と現在を繋ぐ経緯への慈しみ」と話すディレクター仲由起子さんの言葉の裏側からも、ただのコピー品には宿ることのない真の価値を感じ取ることができる。続けて仲さんは「長く着られるものや上質なものを選ぶという価値観は古くから存在してきたが、実際に店頭でヴィンテージに触れることで、現行の服とは異なる素材使いや仕立ての違いから生まれる表情の魅力とその豊かを実感してくれる人や、量より質を求める行動は年齢を問わず年々増えているように感じる」と語る。ヴィンテージという言葉を解釈する幅は、以前にも増して広くなる一方。それでも「現在も過去も本物しか残らない」というLAILA VINTAGEの本質はこの先も決して揺るぐことはなく、賞賛すべき過去のクリエーションに対して真摯に向き合う姿勢によって、市場に存在するリサイクル的側面の強いブランド古着店と一線を画し続けることだろう。

LAILA VINTAGEの影響力は一般消費者のみならず、業界内部の本物思考たちにも深く刻み込まれている。「名店」と安易に括ることは適切ではないと承知の上で、海外大手メゾンのデザイナーたちが来日時に決まって足を運ぶ、LAILA VINTAGEのような名店はごくわずかだ。彼らの目的について仲さんは、「来店理由はその都度さまざまだが、自分たちが今どのデザイナーのどんなヴィンテージピース収集に力を入れているのか、編集視点に興味を抱いている来店者が多い印象。来日における過密スケジュールの合間を縫って終日、もしくは数日かけて全系列店を周り、ストックを含めたラインナップをチェックするデザイナーが大半で、良質なメゾンヴィンテージのスタイルや年代の広さ、ストック数の多さを常にアップデートしている点を信頼、評価してくれているのではないか」と推測する。また来店者の中には、「デザイナーにヴィンテージのセレクションを提案してほしい」と希望するケースもあるのだそう。

新しいメディウム「LA MUSEUM」が問うファッションの創造性の真価

そんなファッションに造詣が深い愛好家たちを納得させるLAILA VINTAGEが新たにスタートしたサービス「LA MUSEUM」もまた面白い。LA MUSEUMは、本プロジェクトの発起人であり運営母体でもあるLAILA(ライラ)、さらに世界中のコレクターたちが所蔵する数万点にも及ぶ衣服や装飾品を3D技術を用いて撮影、データ化し、デジタルデバイスと通信環境さえ整えば誰でもどこでも鑑賞できるオンラインミュージアムだ。すべての展示品は360度鑑賞だけにとどまらず、細かいステッチ1つひとつ、まさに細部に至るまでの鑑賞が可能となる。
 
「コマーシャリズムに乗っ取られつつある現代ファッションにおいて、LA MUSEUMは“Art of Fashion“に着目し続ける。人間がこの手で生み出し続けてきた衣服に宿る芸術性、創造性、クラフツマンシップを後世に伝承していくことを主たる目的とし、ファッションデザインの未来をより有意義で、価値あるものへと導くべく、ファッション界のみならず、人間社会へと貢献していくことを目指す上で、デジタルツールは欠かせないものと考えている」。
 
これまでに得てきた知見と、担うべき役割を発展させる発想。LAILA VINTAGEが発信する貴重な“アーカイブ”が、人の心をさらに惹きつける。

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information

LAILA VINTAGE

2-12-6 jingumae shibuya-ku tokyo 150-0001
12:00 – CLOSE 19:30

https://laila.jp/
INSTAGRAM

kh

writer

本田圭佑

1984年生まれ。古着&インポートを扱うアパレルストアに勤務後、出版社を経てフリーの編集者に。多様なスタイル、カルチャーを文脈にさまざまなメディアで記事執筆やインタビュー活動、企画構成を行う。

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