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2025.06.16

人類が求める本質的価値を探る。WORDS, SOUNDS, COLORS & SHAPES 創立者 ラムダン・トゥアミの哲学

Words: ATSUSHI NAKAYAMA

人類が求める本質的価値を探る。WORDS, SOUNDS, COLORS & SHAPES 創立者 ラムダン・トゥアミの哲学

目黒川通り沿いに佇む目を惹くグリーンの建物、2025年5月にオフィシーヌ ヴェルセル ビュリーをはじめ、数多くのデザインに携わっている実業家ラムダン・トゥアミが「WORDS, SOUNDS, COLORS & SHAPES」を中目黒にオープンさせた。昨年パリに一号店を立ち上げ、ここ日本が世界で2店舗目となる。彼の哲学的な視点から、店に込められた想いを紐解いていく。

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「自然」をテーマに、ラムダン氏のフィロソフィーが反映された店

WORDS, SOUNDS, COLORS & SHAPES(以下WSCS)の名前の由来は、わたしたちが言語として使う「WORDS」、ラムダン氏の持つラジオ番組から「SOUNDS」、色を愛することから「COLORS」、そして、彼がこれまでに様々なものを造形してきたことから「SHPAES」、これら4つのエッセンスを元に彼の世界観は作られている。WSCSは買い物だけでなく、建築やアートまで楽しむことができるホットスポットだ。

ラムダン氏が、日本のWSCSの店舗のテーマを「自然」に決めたのは、幼少期から自然に囲まれ育ち、共存してきた彼にとって必然な経緯であった。ショーウィンドウに並ぶ登山靴やバックパック、カラビナをモチーフにしたピアスを見て連想させられるのは、自然。地球環境に配慮してゼロプラスチックを目指している。自然が生み出す素材や資材、環境に配慮されたマテリアルを使用し、できるだけそのままの姿であらゆるアイデアへと活かしていく。

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環境を配慮した建築、ラムダン氏の魅せるデザイン技

店に入ると、木の香りと温もりが迎えてくれる。元々木材屋だった建物の造りを活かし、天井を抜いて梁(はり)が見えるデザインになっている。天井の高さは空間を広く見せ、店のあらゆる空間に飾られたアートはまるでギャラリーの中にいるかのよう。販売されている商品でさえ、店の顔となるアートピースだ。床やドアなど細部に至るまで木材屋時代から使われていたものをそのまま再利用している。ウッディなバイブスの中にモダンの要素を含ませた店の内装は、彼がスイスでプロデュースしたホテルドライベーグに少し似ていると言う。

特徴的な外観の緑色は、彼の愛車でもある1940年〜50年代のホンダのバモスと同じカラー。中目黒に佇む一際映えるグリーンの建物は、彼の世界観とともにこれから多くの東京人に刺激を与えていくだろう。彼の哲学とこだわりが詰まった店、それは店内で取り扱っているアイテムにも同じことが言える。

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ゼロプラスチック!ラムダン氏の精神が反映されたオリジナルブランド

店内に並ぶアイテムは、オリジナルブランドであるDIE DREI BERGE、自身がプロデュースしたスイスのホテルドライベーグが名前の由来になっている。
環境保全目的ためだけでなく、プラスチックの触り心地が嫌いという彼のオリジナルブランドには、環境への負荷を避けるために、ケミカルなプラスチックの製造・使用を可能な限りゼロに近づけようという強い意志が込められており、コットンやシルクなど自然由来のマテリアルを使用することに徹底している。

それぞれの商品の生産背景にも特別強いポリシーを持つラムダン氏の最高級の素材を用いたクリエーションは、主に日本、そしてイタリアで製造されている。福井県のシルク工場にあるシャトル織機で作り上げたシルクにプリントを施したシャツや、京都の友禅染めを用いた鮮やかでパキッとした色、細かな柄を繊細に染めた染色方法はただ見るだけでなく実際に触れることで更なる魅力を生み出している。また、こうして日本の失われていく伝統を繋いでいくことは、地方都市の発展、文化や技術の継承となる。

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自然をテーマとしたWSCS、ディテールにこだわりを見せた建物やアイテム、アート作品からはラムダン氏の哲学が垣間見える。店内を見回していると、面白いアートを見つけた。「THE THREE ESSENTIALS HUMAN BEINGS CANNOT LIVE WITHOUT – FOOD, WARMTH and SHELTER. MONEY IS NOT REAL WEALTH」訳すと、人類に本当に必要で価値のあるものは食べ物、暖、住居でありお金ではないというメッセージ。以前、WWDとのインタビューでラムダン氏は、コストのことは全く考えないと語っていた。仕事に追われ、余裕もなく日々を過ごす現代人にとってインパクトのあるステートメント。しかし、自然の中で暮らし、そこに食べ物もあり居住スペースもあり、暖がとれるのであれば、お金は必要でないのかもしれない。本来何が必要で重要なのかハッとさせられ、少し彼の頭の中を覗けた気がした。

今後は2階と3階部分に、カフェとギャラリーをオープンする予定とのこと。WSCSを通して感じる大きな自然というテーマと彼の持っているビジョンが、どう反映されていくのか楽しみだ。

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information

WORDS, SOUNDS, COLORS & SHAPES

住所:東京都目黒区青葉台2-16-7
営業時間:12:00-20:00
TEL:03-6455-1847
定休日:月曜日
 
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atsushi nakayama

writer

atsushi

1995年生まれ。高知県出身。アメリカ留学後、オーストラリアでワーキングホリデーを経験。2024年Tender Party参加。サステナブルとファッション関連担当。時々モデル。時々キャットシッター。
 
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