Fashion

2025.04.07

詩的なロマンティシズムと軽やかな反骨精神が共存する、prune goldschmidtの新時代的エレガンスストーリー。

photographer:JUN YASUI
stylist:JUNKO KOBASHI
hair:WAKA ADACHI
makeup:NAO YOSHIDA
model:ALEX STEIN
text: LUNA YAMADA

詩的なロマンティシズムと軽やかな反骨精神が共存する、prune goldschmidtの新時代的エレガンスストーリー。

ふんわりと波打つフリル、繊細なレース、そしてクラシカルな装飾を纏ったシルエット——どこか懐かしさを感じさせるディテールの数々は、遠い記憶の中にある優雅な装いを思い起こさせる。しかし、それは単なるノスタルジアではない。そこに宿るのは、軽やかな反骨精神。意表を突くディテールや構築的なラインは、クラシックに寄りかかるのではなく新たな解釈を生み出し、現代の女性のための服であることを静かに主張する。

2020年にパリでデビューしたprune goldschmidtは、ラグジュアリーを再解釈し、固定概念を超えるエレガンスを提案するブランドだ。美しさとは、ただ装うことではなく、自分の内面と対話し、そこに秘めた意志を纏うこと。その服は着る人に物語を与え、そして着る人自身がその物語の主人公となることを促している。

伝統とウィットが交差するデザイン哲学

prune goldschmidtの服は、従来のクラシックな装いを踏襲しながらも、その枠を超え、新たなエレガンスのかたちを提示する。伝統と遊び心の狭間で、新たな女性像を軽やかに描き出すデザイン。その絶妙なバランスこそが、このブランドの核心と言えるだろう。それらはまるで、格式張った宮廷画の片隅でほくそ笑む貴族のポートレートのように、静けさの中に確かな意志を宿す。
 
例えば、シルクのリボンが大胆に結ばれたシャツワンピース、ボディラインを強調しながらもどこか反骨的な印象を持つブラックコルセット、遊び心に満ちたボタンの配置。かつての貴族やファミリーのルーツでもあるロスチャイルド家のプリントを使うなど、ブルジョワの装いに着想を得ながらも、その格式を崩し、軽やかなユーモアを加えるprune goldschmidtは、クラシックとモダンの境界を故意に曖昧にし、独自の物語を紡ぐ。
 
この独創的なエレガンスを生み出すのは、デザイナーのprune goldschmidt。フランス生まれの彼女は、Sonia Rykielなどで経験を積み、ファッションの持つ詩的な側面と、そこにユーモアを添える手法を磨いてきた。自らの名を冠したprune goldschmidtのデビューコレクション(2021SS)が、記憶に新しい。その独創的な美学が多くの人に鮮烈な印象を残したのは、一見すると古典的な装飾美を思わせるデザインに、洗練されたウィットを見出すことができたからだろう。
 
prune goldschmidtは単なる懐古趣味にとどまることなく、現代の女性がまとうべきエレガンスを探し続ける。あの頃夢中になったおとぎ話には続きがあって、それはきっと、私たちが自分自身で紡ぎ出すもの。伝統とウィットが交差した時、新時代的エレガンスストーリーは紡がれ始める。

2024.06.29_tenderparty00044

UR JACKET|COATE
JUMPSUIT|PRUNE GOLDSCHMIDT
EARRINGS|SWAROVSKI
SHOES|Sergio Rossi

パリとボルドー、二つの都市が育むクリエイション

prune goldschmidtの世界は、ボルドーの静けさとパリの洗練、その二つの都市がもたらすエネルギーによって育まれる。
 
彼女のクリエイションの拠点は、自然と静寂に囲まれたボルドーのアトリエ。ここでは、ブランドの世界観を体現するオリジナルプリントが生み出され、それがやがてコレクションの核となる物語へと織り込まれていく。
 
そして2023年、prune goldschmidtは、パリ・サンジェルマンに初のブティックをオープンした。(※現在は、ボルドーに移転。)その空間はまるで小さな劇場のように、ブランドのロマンティックな世界観を体感できる場所。ボルドーで生まれたクリエイションは、ここパリで新たな息吹を吹き込まれ、より多くの人々のもとへと届いていく。
 
過去と現在を行き来するように生み出される服は、この二つの都市をも行き来することで、まさに「詩的なパンク」とも呼びたくなるような大胆さを確固たるものとする。クラシックなディテールを尊重しながらもその枠にとどまらない様子は、現代の女性が望む自由をも鮮やかに描き出しているようだ。

LOOK_12_0024_V2

JUMP SUIT|prune goldschmidt
24AW LOOKBOOK

着ることは、自分自身を物語ること

現代において「女性らしさ」は、多様な意味合いを含んだ言葉に進化したと思う。それは甘さだけではなく、強さやユーモア、そして個としての美意識が交差するもの。それを体現するように、彼女のデザインは、一人ひとりの持つ多様な側面と共鳴する。
 
prune goldschmidtの服を纏うということは、自分自身のアイデンティティを再確認することに繋がるのかもしれない。繊細でありながら大胆、クラシックでありながら現代的。その二面性のバランスを楽しみながら、私たちは服を通じて自分だけの物語を見つけていく。
 
この物語は、誰のものでもない。時代を超えて受け継がれるエレガンスも、ひそやかに潜む反骨精神も、全て自分のもの。どう捉え、どう着るかは、自分自身で決めることができるのだ。
 
prune goldschmidtの服に袖を通す。私は、私だけのストーリーを、自由に描いていく。

TP_logo

Sustainability Anquete

prune goldschmidt

TP VISA

lunayamada

Writer

山田 ルーナ

芸術大学の音楽科を卒業後、文筆業を開始。ウェブメディアを中心に、コラムやエッセイ、インタビュー記事などの企画・執筆を行う。良くも悪くも興味の幅が広い性格から、クラシックピアノをバックグラウンドに持ちながらも、実は音楽についての記事はあまり書いたことがない。
 
INSTAGRAM