Fashion

2025.03.14

オートクチュールが注目。日本人デザイナーの帽子ブランドHIZUMEから溢れる自然美

photographer:JUN YASUI
stylist:JUNKO KOBASHI
hair:WAKA ADACHI
makeup:NAO YOSHIDA
model:ALEX STEIN
text: CONOMI MATSUURA

オートクチュールが注目。日本人デザイナーの帽子ブランドHIZUMEから溢れる自然美

フランスを拠点に活動する日本人デザイナー、日爪ノブキ氏が手掛ける帽子ブランドHIZUME(ヒヅメ)。伝統技術と現代デザインを融合させ、帽子をアートへと昇華させたその作品は、パリのオートクチュール界でも高く評価されている。HIZUMEのクリエイションは、美しさだけでなく、自然や社会との調和を追求する姿勢が際立つ。その背景には、環境への配慮と持続可能な社会を目指すブランド哲学が根付いていた。

「やるべきこと」を見極め、辿り着いた天職

デザイナー・日爪ノブキ氏は滋賀県出身。文化服装学院を首席で卒業後、イタリアや日本での経験を経てパリに拠点を移した。文化服装学院の10代目学院長・故小池千枝氏により服づくりの枠を超えた哲学を学び、それが彼のルーツにつながっているという。
当初は洋服づくりを目指していたが、「やりたいこと」と「やるべきこと」を見極め、帽子一本に絞ることを決意。パリに拠点を移した際は、数多くのパリのオートクチュールブランドとコラボレーションを行った。彼の作品は、卓越した技術とアートへの情熱を反映し、2019年にはM.O.F.(フランス国家最優秀職人章)の帽子職人部門で日本人として初めて受章。伝統を重んじながらも、現代的な感性で再構築する彼の哲学が、多くの人々を魅了している。

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HAT HIZUME | BODYSUIT WOLFORD | TRENCH SHIRT JACKET PROTOTYPES | TROUSERS SEFR | SHOES STYLIST’S OWN

自然的な美が、現代の技術でアートへと昇華する

クラシックからアヴァンギャルドなデザインまで、コレクションのたびに新鮮な驚きを提案するHIZUMEの帽子。それらは、地球の自然が魅せる絶対美からインスピレーションを受け、現代風デザインへと昇華する。
日爪氏が自然豊かな滋賀県で生まれ育ったことも、デザインのルーツだと言えるだろう。自然と現代的な造形が融合し、彫刻的な帽子のデザインが出来上がるのだ。また、そのクリエーションは帽子作りだけに留まらず、生地作りから帽子の基礎となる木型のデザイン設計やブランドのビジュアルイメージや映像に至るまで、随所に彼らの世界観を感じることができる。

長く愛されるものにこそ価値がある

HIZUMEは、過剰生産・過剰廃棄が課題となるファッション業界において、「良いものを長く使う」ということを提唱する。たとえば、ぬいぐるみやシャツを再利用した帽子を発表したり、貝印とコラボレーションして長く使える裁ち鋏をデザインしたり、消費者・生産者の両者に、持続可能な未来について提案しているのだ。
同時に、日本における帽子の担い手が減少していることにも目を向ける。彼が目指すのは、死ぬまでに全人類の頭に帽子を被せること。そのために会社の屋号も『JBC(人類帽子計画)』と名付け、高みを志す。「最高の帽子デザイナーとは最高の帽子職人でもある」という信念のもと、フランスの人間国宝とも言われる M.O.F.の名を重んじ、その信念を次世代へと繋ぐ努力を惜しまない。

使い捨てない未来をデザインする

HIZUMEはいかに目先の利益にとらわれずに、ブランドが未来にあるべき姿を追いかけられているかを重視しているという。10年20年先、さらには100年先まで残るべき帽子を作るためには、あえて「わかりにくさ」を重んじる。
すぐに答えを求め、流行の移ろいが早いファッション業界に身を置いてきた日爪は、だからこそ、短絡的なマーケティングに陥らずに、本当に必要なものを見極めた帽子作りを心掛ける。拡散ではなく、本当の良さを分かってもらうために、帽子産業の長期的な繁栄も念頭に置き、より多くの人に届けられる帽子の形を模索している。
 
HIZUMEは、伝統技術を礎に未来へのビジョンを形にするブランドだ。帽子だけでなく、サステナブルなファッションブランドの旗手として、その挑戦は続く。

【出典】
https://shop.hizume.com/pages/about-hizume
https://www.kai-group.com/fun/event/iiha2022/product_01.html
https://www.fashion-press.net/brands/5500
https://www.gqjapan.jp/article/20240922-artisanal-fashion-hizume
https://grind-magazine.com/tranoi-tokyo-hizume/
https://grind-magazine.com/hizume-nobuki-from-grind-vol-107/

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writer

Conomi Matsuura

ライター/エディター。ファッション・カルチャーを扱う東京の出版社に勤務後、地元・奈良に拠点を移す。都会と地方を行き来しながら、自然に循環する社会について模索中。