Fashion

2024.12.12

カジュアルフェミニンな北欧発ブランドGANNI​が向き合う環境責任

photographer:DAEHYUN IM
fashion director:JUNKO KOBASHI
hair make:YOKO OKUNO
Model:ALEXA Z
text:CONOMI MATSUURA

カジュアルフェミニンな北欧発ブランドGANNI​が向き合う環境責任

デンマーク・コペンハーゲン発のファッションブランドGANNI(ガニー)。カジュアルなニットからフェミニンなワンピースまで、袖を通すだけで1日がハッピーになるようなデザインが人気のブランドだ。そのヴィヴィットでキャッチーなスタイルは、#GANNIgirls というハッシュタグのもと、フィードを賑わせている。
そんな人気の裏でガニーは、愚直に堅実に、サステナビリティな目標実現に取り組んでいるという。

スカンジナビアンデザインの新しい風

ガニーはコペンハーゲンのギャラリーオーナー、フラン・トルーウルスン(Frans Truelsen)によってカシミアウェアのブランドとして2000年に創立。その後、2009年にニコライ・レフストラップ(Nicolaj Reffstrup)と・ディッテ・レフストラップ(Ditte Reffstrup)の夫婦がCEOに就任し、ディッテがクリエイティブディレクターを務めることとなった。
彼らのビジョンによって、ガニーはスカンジナビアンデザインに新たな風を吹き込むブランドとしての地位を獲得した。フェミニンでありながらリラックスしたスタイルが特徴な、シンプルながらも個性的なデザインは、国を超えてファッショニスタの心を捉えている。同時に環境に配慮した素材選びや製造プロセスにも力を入れており、サステイナブルファッションのリーダーとしての地位を確立している。

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GANNI 2024-25 PRE-SPRING COLLECTION

包括的な責任の姿勢が見られるレポートも公開

ガニーは環境負荷を改善するための具体的な行動を継続的に実施している。
2020年からは、RESPONSIBILITY REPORTとして、目標に対する活動報告を発表。2027年までに2021年の二酸化炭素排出量から50%削減という目標を掲げ、達成に向けてサプライチェーン全体での脱炭素化を推進している。
同時に、雇用における賃金や人種や性別の多様性、透明化といったソーシャルインパクト、気候変動に対する脱炭素化や生物多様性、循環性のための素材開発など全方位的に具体的に取り組み、結果を発表している。部分的な処置ではなく包括的なサステナビリティを実践するための認証であるB Corpも取得済みだ。

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SWEATER LES TRICOTS D'O | SHORTS GANNI | NECKLACE NOAARK

透明性がある環境負荷の少ない素材を

2019年以来、ガニーは従来使用していた素材を見直し、リサイクルまたはオーガニックとして認証された素材や、高い動物福祉を保証する代替素材への切り替えに努めている。特に二酸化炭素排出量の多いバージンレザーの段階的な廃止を掲げ、そのために、240万DKK(日本円で約5200万円)の潜在的な売上が見込まれていたウェスタンブーツの2色を生産中止にした。彼らは、持続可能性が商業性と相反することがあると理解したうえで、経営陣の全会一致によりその決断を下している
 
また厳選された素材については、透明性を保つために「GANNI Fabric Score」という名前でオープンソースとして公開されている。現状でより良い素材を選び、環境に悪いとされる従来の素材を避けることはもちろん、彼らは持続可能な未来の素材開発にも積極的だ。2023年には、6つの未来の生地を発売するという目標を達成。年間を通じて7人のイノベーターと協力し、そこで生み出された生地の1つであるCirculose®をメインコレクションで使用することに成功した。Circulose(R)は大企業のリサイクル素材に供給するイノベーティブなカンパニーで世界で注目されているが、倒産の危機から見事に復活を遂げたばかりだ。

脱炭素化を主導する「Carbon Squad」

そんな革新的な取り組みを推進するためには、社内の意識統一(ガバナンス)も大事なポイントだ。社内横断的なチーム「カーボンスクワッド(Carbon Squad)」を結成し、脱炭素化戦略の実行に取り組んでいる。このチームは、物流、マーケティング、人事、商品計画など、さまざまな部門の専門家で構成されており、各部門の知識を活用してサステナビリティ目標の達成を目指している。また経営陣の報酬に関しては、炭素の削減目標にも結び付けられているという。売上だけではなく環境に対する成果が社内の評価制度に関わる事例は、あらゆるブランドにとって見習うべき在り方といえるだろう

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LONG DRESS GANNI | SHOES SAYE

循環型の社会を目指して

生産における余剰素材は100%再利用することを心がけているGANNIは、デザイン段階においても、循環性のあるデザインについて積極的に模索している。たとえばその1つとして、ポルトガルの製造パートナーと共同で、スクリーンプリントを施したコットンTシャツにおけるリサイクルの可能性をテストしたことが挙げられる。100%水性染料に切り替え、プリントでもリサイクルができるデザインを採用した。またヨーロッパでは、洋服のレンタルプラットフォームソリューションとの連携に力を入れる。自社においても「GANNI REPEAT」というレンタルプラットフォームを立ち上げ、ただ買うだけではない循環型のファッションの可能性を追及している。ガニーの古いコレクションやアウトレット商品が購入できるストア「GANNI POSTMODERN」を運用したり、ロンドンのSOJOと協業し自社製品のリペアサービスをロンドンのコミュニティ内で行っている。
 
昨今では、New BalanceやBarbourといったブランドとのコラボレーションも積極的に展開しているGANNI。彼らの姿勢に共鳴し、そのデザインだけでなく責任についても影響を受けるブランドは増えていくだろう。GANNI RESPONSIBILITY REPORTを通して、私たちは利益追求だけの時代が終わっていることを実感させられる。では、何ができるだろうか。ひとつひとつ丁寧に直向きに、解決策と向き合うガニーの姿勢に今後も注目しながら、自身の選択を迫られる時が来ているだろう。

【出典】
https://www.ganni.com/en/home
https://www.ganni.com/en/responsibility/2023-report-climate-action-and-biodiversity.html
https://www.fashionsnap.com/brand/ganni/
https://www.fashionsnap.com/article/2022-09-21/ganni-b-corp/
https://www.farfetch.com/jp/style-guide/brands/favorite-brand-of-northern-europe-ganni/
https://www.fashionsnap.com/brand/ganni/

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GANNI

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writer

Conomi Matsuura

ライター/エディター。ファッション・カルチャーを扱う東京の出版社に勤務後、
地元・奈良に拠点を移す。
都会と地方を行き来しながら、自然に循環する社会について模索中。