Fashion

2024.11.21

Prototypesがアップサイクルでいざなう次世代の連帯

photographer:GENKI NISHIKAWA
stylist:JUNKO KOBASHI
hair:MASAYO TSUDA
makeup:KAZUHIRO NAKA
model:MEL VAN ROEMBURG
words:ATSUSHI NAKAYAMA

Prototypesがアップサイクルでいざなう次世代の連帯

毎年ファッション業界だけでも192万トンの繊維廃棄物が出ており、その量は毎秒あたりトラック1台分の衣料の廃棄量に値するという。
トレンドに流され、ついこの間まで着ていた洋服を捨てたり、売ったりしたことがないだろうか。洋服の製造過程において大量のエネルギーや水が使用されるだけでなく、遠い国の捨てられた洋服は砂漠の地へと廃棄される。そんな悪循環に終止符を打とうとするブランドがある。
 
Prototypesは、再利用された生地を使うことで、100%サステナブルな精神でファッション業界に挑む新鋭のブランドだ。メンズライクでありながらストリート感をしっかり持たせたデザインにはたくさんのトリックが仕掛けられている。Prototypesが持つアティチュードは、ファッション界だけでなくわたしたち消費者も学ぶべきものがある。

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TOPS, SHIRTS DAWEI | MESH PENCIL SKIRT PROTOTYPES | HAND MIRROE Officine Universelle Buly | CHAIR KITA WORKS | SHOES STYLIST’S OWN

個性を引き出すためのアップサイクル

Prototypesは、2021年にスイスのチューリッヒでローラ・べハムとカラム・ピジオンによって設立された。二人は元々フランスのラグジュアリーストリートブランドVetementsで机をシェアしていた仲だ。ブランドのDNAとして、環境面に配慮しサステナブルであることを徹底している。そのため、コレクションの全ては元々廃棄物であった生地を再利用している。彼らにとってはゴミではなく、クリエイティブを表現する立派な材料だ。工場と協力し、自らの手でデッドストックされたものをアップサイクルしている。サッカージャージからデニム、警察のユニフォームまで、多岐に渡る素材から選ばれている。中でも警察のユニフォームは政府基準で製造されているため、丈夫で長持ちすると言う。たくさんのネクタイから作られたドレスや、サッカージャージをアレンジしたフーディ、どれもクリエイティブに再構築されたアイテムだ。
 
業界の問題を無視して新たな洋服を新たな素材を用いて作るのではなく、長年、ファッション業界の前線で働き続けている二人だから表現できた衣服の新しい提案。皮肉にも「新たな洋服を作るよりも、アップサイクルをする方が高価」だと、ローラは言う。昨今では、多くのブランドが環境に負荷の少ないオーガニックの素材を使用したり、製造過程において再生可能エネルギーを使ったり水の使用量を抑える試みを行っている。少しずつ、ファッション業界は必要な変化に対して順応しようとしている。そこで、アップサイクルとはまた違ったビジネスモデルを彼らは提案している。この独創的なアイデアは斬新だがオールドファッションで、新たな時代の基盤になる可能性がある。

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TEE TOP, SKIRT PROTOTYPES | NECKLACE MESSIKA

誰もが気軽に参加できるプログラム”PROTO PACKS”

彼らは、アップサイクルしたコレクションラインとは別にDIYラインを設けている。消費者の自宅にある着用しなくなった洋服を、新たに自らの手でPrototypesのDIYラインにすることができる「PROTO PACKS」だ。Prototypesのウェブサイトからパターンと説明表をダウンロードし、アイテムを縫製する。「二つのスウェットパンツから、こんなにイケてるフーディができるのよ!やってみて!」と、二人の気持ちが込められたラインである。

元々は人々の暮らしの中にあったDIY。そこに100%頼り切るのではなく、自らの手で加工することにより不要だったものが、より想いの入ったアイテムへと生まれ変わる。サステナブルな素材を用いて消費者自身が作り上げることができ、しかもPrototypesが提案するパターンを使って、(順当に行けば間違いなく)完全にオリジナルなアイテムとなる。
 
さらにPrototypesは、「PROTO PRINTS」というDIY方法も提案している。こちらは、更にシンプルで、服にアイロンをするだけでプリントできるタトゥーシールのようなもの。簡単に自分好みのデザインへとアレンジすることができるのだ。彼らの包装紙の材料はもちろん生分解性。PROTO PACKSとPROTO PRINTSで共通して言えることは、わたしたち自身でできる最も身近な洋服のアップサイクルということ。毎日当たり前に服を着ることも、それらをカスタムしてより息の長い愛着のある唯一無二なアイテムへと育て、寄り添っていくこと。シンプルに物を大切にするということから派生する「サステナブル」に対する徹底的な姿勢は、社会に挑戦する彼らのビジョンそのものだ。

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TOPS, SHIRTS DAWEI | MESH PENCIL SKIRT PROTOTYPES | HAND MIRROE Officine Universelle Buly | CHAIR KITA WORKS | SHOES STYLIST’S OWN

Prototypesのアイテムを購入することは、サステナブルなブランドに投資しているということ。PrototypesのDIYラインを試すことは、既製品の可能性を広げるということ。Prototypesのように、わたしたち自身もどうすればより良い環境を作れるのか考え、挑戦し続けることが重要ではないだろうか。

【出典】
https://proto-types.ch/INFO-CONTACT
https://proto-types.ch/PROTO-DIY
https://gatamagazine.com/articles/fashion/an-interview-with-prototypes
https://www.papermag.com/prototypes-pfw
https://metalmagazine.eu/en/post/prototypes-out-with-the-new-and-in-with-the-old

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writer

Atsushi Nakayama

1995年生まれ。高知県出身。アメリカ留学後、オーストラリアでワーキングホリデーを経験。2024年Tender Party参加。サステナブルとファッション関連担当。時々モデル。時々キャットシッター。